2011年7月7日木曜日

膝の痛みその2

(6)半月板の痛み
半月板そのものは痛覚神経が乏しいので理論的には半月板損傷そのものでは痛みを生じることは少ない。
損傷により機械的に不安定になることで半月板損傷基部の線維性関節包に圧痛を生じる。また内側関節裂隙の圧痛の多くは線維性関節包の脛骨付着部の圧痛と考えられる。関節炎を起こし関節水腫を生じる様になると周囲組織の線維化を伴い痛みが慢性的になる場合もある。

(7)前十字靱帯の痛み
前十字靱帯そのものは痛覚神経が乏しい。損傷による痛みと言うよりは関節血腫による関節炎が主である。
関節炎は膝蓋下脂肪体・関節包の線維化に繋がり関節周囲痛となると考えられる。
急性期の処置が適切でない場合は線維化による関節の柔軟性の低下による痛みの長期化と大腿四頭筋筋力低下となることが少なくない。
損傷による不安定感を残したままのスポーツ活動の継続は膝崩れ・半月板損傷・関節軟骨損傷など関節内組織の不可逆的な損傷をまねき、痛みが持続する原因となる。

(8)後十字靱帯の痛み
後十字靱帯には痛覚神経が無いため靱帯損傷による関節血腫よる痛みが生じる。
脛骨粗面の叩打痛や階段下降時の膝崩れが後十字靱帯損傷にみられる特徴である。

(9)内側側副靱帯の痛み
内側側副靱帯は関節包靱帯であり、線維性関節包を形成しており痛覚神経が多数分布している。そのため内側側副靱帯損傷後の関節可動時の疼痛は強い。

(10)膝後外側支持機構の痛み
後外側複合体を構成する外側側副靱帯、膝窩筋腱複合体も損傷により痛みを感じる。特に機能障害として後外側回旋不安定性が生じると、膝屈曲動作時に膝崩れ感を伴う痛みが生じる。

3 件のコメント:

やま さんのコメント...

有意義なレポありがとうございます。
大変勉強になりました。
参考にさせて頂きます。

亀仙人 さんのコメント...

自分もですね、半月板外側には知覚神経が来ているので痛みを感じると思っていました。(昔中山先生の授業で位置覚が主だとは言っていたの知っていましたが)
関節包靱帯と比べて関節包内靱帯に痛覚線維が少ないというのも、実は知りませんでした。(ただしACLやPCL損傷の痛みが関節血腫に由来するかどうかは疑念がありますが、滑膜に包まれてますし実感としては納得できませんね)
以前うちの若い衆から魚には痛覚線維が無いと言われ少し驚きましたが、調べてみると少ないものもあるというのが最近の見解だそうです。
こういう基礎的なことすら完全に統一した見解はなさそうで、改めて基礎的な所の勉強や、基礎研究の重要さが身にしみます。

亀仙人 さんのコメント...

例えば昔白石先生が、ATFの高スピードの完全断裂では出血も痛みも感じないことがあるというようなことを言っていましたが、関節包靱帯であるATFに本当にそんなことがあるのか?(腱では起こりうると思いますが)
興味は尽きません。

最後に無麻酔(皮切開の局麻位は受けてるでしょうがね)で関節鏡を受けた方の勇気に敬意を表したいと思います。あなたのおかげで少し医学が進歩しました。