2011年7月7日木曜日

膝痛の原因その1

膝痛の原因となりうる組織についてMB Orthop Vol24 No.5 2011(P75~82) 
「半月板・靱帯障害」が良くまとまっていると思いましたので、抜粋してみました。

麻酔をせずに関節鏡下でプローブによる触診してみると、痛覚神経の乏しい関節軟骨・半月板・十字靱帯にはほとんど痛みはなく、痛覚神経を多く含む滑膜・膝蓋下脂肪体では痛みを感じる。
膝痛の痛みの原因は痛覚神経が豊富な関節周囲の滑膜・骨膜・筋膜・腱・骨であると考えられる。

(1)関節内痛
関節内で痛覚神経の多い滑膜による痛みが原因となりうる。
(2)膝蓋下脂肪体痛
脂肪性の滑膜であり、膝の伸展機構を構成しているので負荷も大きく膝痛の原因として最も多い部位である。
(3)関節周囲痛
線維性関節包には痛覚神経が多く関節内で炎症が生じると線維性関節包の線維化が生じ柔軟性が低下することによって疼痛の閾値の低下が起こり膝痛を生じやすくなる。
(4)関節支持軟部組織痛
関節支持組織のうち、軟部組織である筋、腱、またはその移行部、腱・靱帯付着部(enthesis)は滑膜-付着部複合体が機能的ユニットとして働く。enthesisの近傍には滑液包として滑膜組織で裏打ちされる組織が存在し、それが付着部への力学的ストレスを緩衝する作用がある。この滑膜組織が炎症の場となりうるため、付着部炎となって痛みに関与する。
(5)骨膜痛、関節支持骨組織痛
骨膜にも神経組織は多く存在し、関節包から連続しており、関節内の変化により痛みの原因になりうる。
骨組織も軟骨組織が摩耗し、軟骨下骨が露出する様な場合は、荷重に際して痛みの原因になる。

関節内痛と関節周囲痛は互いに関連がある。関節内痛の原因と考えられる関節炎は炎症期、増殖期、成熟期に分けられる。関節炎モデルによると4日目に線維性関節包、筋肉などの関節外組織へのマクロファージの浸潤を認め、7日後にマクロファージの膝蓋下脂肪体への浸潤が最も多くみられ、28日後に滑膜組織内のコラーゲン線維の増加が認められた。このことは関節炎が関節周囲組織に波及し関節周囲組織の線維化に関与していることを示唆している。

0 件のコメント: