2008年4月11日金曜日

肩関節脱臼に対する強内旋位固定

船戸先生に肩関節脱臼の強内旋位固定の報告があることを教えていただきました。

強内旋位の固定肢位は前腕を回内位で、腰部に手を回した肢位です。ストッキネットで作成したバンドにて肢位を保持します。入浴時および睡眠時は除去とし、3週間固定するそうです。
症例は2例(14歳、72歳ともに女性)です。MRI上で関節唇が内旋位、外旋位ともに密着しなかったタイプに対し、強内旋位では関節唇を臼蓋縁に密着整復させることができ、2年以上の経過しても再脱臼が認められなかったとのことです。

理論としては肩を強内旋位にすることにより関節唇は前方を肩甲下筋腱と関節包に、後方を肩甲下筋腱付着部と関節包と上腕骨頭にはさまれながら関節窩縁に押さえつけられ整復されます。
関節唇に連続する骨膜が伸張や損傷され、剥離した関節唇が大きく転位するようなタイプでは外旋位にしても関節窩縁に近づきこそすれ、接触を得ることは難しいが強内旋位ではMRI上剥離部を圧着することができたとしています。
さらに外旋位にすることで肩甲下筋が伸張され筋菲薄化を助長し再脱臼の原因となる。外旋位固定では特殊で煩雑な装具が必要であるが、強内旋位固定では比較的固定が簡易などの理由からもこの方法を推奨しています。

2年もの間経過観察をしている割に症例が2例と少ないのが気になりますが、固定法として頭に入れておいてもいいかもしれません。

文献
中村周他:初回外傷性肩関節前方脱臼に対する強内旋位固定法.臨整形 42:1091~1095、2007

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