2014年6月6日金曜日

文献拾い読み(橈骨遠位端骨折)

成長期の小児と閉経後から前期高齢者で発生頻度が高い。
若年者の年齢別発生頻度は男12~13歳、女10~11歳である。これは成長のピークと一致するため骨強度が成長に追いつかず骨脆弱化が生じて骨折発生のリスクが高まる。
またこの年齢では男児の方が発生率が高い。

閉経後女性では50歳代から発生率が上昇し60~70歳代で高値となる。75歳以後には発生率上昇はみられない。これは80歳以上で発生率が急激に上昇する大腿骨近位部骨折や上腕骨近位端骨折とは対照的である。(橈骨遠位端部の海綿骨が占める割合は上腕骨近位や大腿骨頸部と近似している)
この理由として75歳以上の高齢者では転倒時に防護的に手をつくことが困難となる事が挙げられる。
この年齢層では成長期とは異なり男性での発生率はきわめて低い。

橈骨遠位端骨折は96%が転倒して発生し後方への転倒が原因となることが多い。また2/3が屋外で受傷していて歩行能力が高く、屋外での活動が可能な症例が橈骨遠位端骨折の大半を占めている。

受傷側は全年齢左側に多い。大腿骨近位部も左が多いが理由は不明である。

危険因子として骨密度減少、転倒、飲酒、身体活動性が高いこと、歩行速度が速いこと、視力低下、歩行頻度が多いことなどがある。

前腕骨骨折の既往があると前腕3.3倍、椎体1.7倍、大腿骨近位1.9倍に骨折リスクを上昇させる。

臨床試験で橈骨遠位端骨折の抑制効果が明らかになっているのはエルデカルシトール(エディロールなど)、デノスマブ(プラリア皮下注)、アレンドロネート(フォサマック、ボナロン等)である。臨床試験の結果アルファカルシドール(ワンアルファ、アルファロール等)群では前腕骨骨折発生率が3.6%にたいしてエルデカルシトール群では1.1%と、71%の相対リスク低減がみられる。
ビタミンDは転倒リスクを低下させる効果が知られているためエルデカルシトールは骨強度改善と同時に転倒を抑制する可能性がある。

転倒が主たる原因のため特に冬期凍った時に外出しないよう指導することが重要である。

整・災外57:121-128、2014より