2012年11月7日水曜日

踵骨骨折

整災外科2012年6月号で踵骨骨折の特集をしていました。
整復法として有名な大本法の大本秀行先生が寄稿していますので少しまとめてみました。
大変興味深い報告ですので原著に当たってみてください。

骨折メカニズム
踵骨骨折は直達外力で、まず内外側骨片に分断される第一次骨折を生じる。続いて後距踵関節面の圧迫骨折が起こり、関節面を含む転位骨片(joint fragment)が外側体部骨片の中に陥没する二次骨折を起こす。
joint fragmentが内側に傾く理由は、跳ね返るときjoint fragmentが体部骨片と一緒に末梢に移動するが、踵腓靭帯がjoint fragmentの斜め後下方に付着しているため、下方より持ち上げられ内側に傾くと考えられる。

徒手整復の機序
踵腓靭帯がほとんどの症例で転位骨片のjointfragmentに付着しているためこれを利用する。受傷時joint fragmentは末梢の体部骨片の中に落ち込んでいる。踵骨の両側より圧迫し、強い牽引を加えながら内反させると踵腓靭帯が緊張し、それ以上の内反は距踵関節では起きず、骨折部で起きる。その結果骨片が後側方より持ち上がり骨折部が離開し,“ 噛み込み"がはずれ、離開部は前方に移動すると同時に側方膨隆も改善される。
次いで外反させると離開部の相接する位置で、末梢の体部骨片がjoint fragmentを押し上げる。再度、内反することで骨折部は再び離開し、相接する位置は前方に移動する。内外反をさらに繰り返すことにより骨片後部から前方にかけて徐々に整復されていく。この間、およそ10秒程度でcrepitationがなくなれば整復されている。

 コツとして
1)手首を十分に返し、牽引(助手が強く押さえても浮き上がるぐらい)を強く行いながらかなり速い内外反を同時に行うこと。(中途半端な内外反は患肢が揺れるだけである)
2)術者の小指球部が腓骨末端に触れる程度で踵腓靭帯付着部より少し末梢を把持し靭帯の位置を意識して行う。
3)濡らした綿手袋を用いて把持を確実に行う。


踵腓靭帯がjoint fragmentに付着してないときや、靭帯が付着していても粉砕しているときは徒手整復不能例となる。

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