2012年7月6日金曜日

拾い読み

オルソペディクス6月号がOA特集でしたので気になったところをあげてみました。

(1)末期膝OAにホームエクササイズを行うことで5年程度手術をせずにマネージメントできたのは約1/3のみである。

(2)関節裂隙3mm以上をⅡ度、3mm以下1mm以上をⅢ度、1mm未満の末期をⅣーⅤ度
と分類しホームエクササイズの継続率を観察した。
Ⅱ度の継続率は初診から42ヶ月で継続率91.0%で78ヶ月まで不変であった。
Ⅲ度の継続率は初診から42ヶ月で継続率61.8%その後も低下を続け78ヶ月で52%であった。
ⅣーⅤ度の継続率は初診から24ヶ月以上で34.3%でその後も低下を続け54ヶ月で31%であった。(24ヶ月以内に15.7%が通院が途絶え、50%は手術に至った。)
つまりホームエクササイズはいずれの場合でも効果があるものの、重症度が上がるにつれ効果は低下するので効果を実感することの少ない重症度の高い患者が継続率が下がる傾向にある。

(3)運動療法は関節内ヒアルロン酸注射に比べ、初期OA患者に対する関節腫脹改善効果が優れていた。運動療法によって関節液中のヒアルロン酸分子量粘性度が増加し、運動3時間後に関節液を採取したところサイトカイン(ILー10)濃度が有意に上昇していた。(インターロイキン10は関節保護作用がある)このため運動による刺激で関節を構成する組織は活性化すると結論づけている。

(4)若年肥満女性と肥満していない女性に外側楔状足底板装着時と非装着時の歩行分析を行った結果、足底板を装着した場合の内反モーメントが肥満群で平均3.6±3.9Nm低下したが、非肥満群では1.9±1.8Nmの低下にとどまった。
肥満女性の場合、足底板によって膝のアライメントが悪化するのが予防でき、膝OAを発症するのを遅延させる可能性がある。

(5)タイ人の仏教徒とイスラム教徒の集団で膝OAの疫学調査をした結果、宗教的儀式で子供の頃から膝の深屈曲運動を反復する回数の多いイスラム教徒の方が疼痛を伴う膝OAの70歳以上の罹病率が有意に低かった。

(6)膝装具の比較
①装具なし ②4°外反角度のついた膝硬性装具 ③中間位で装着する軟性装具の3つの異なった条件で内反モーメントと疼痛指数を比較したところ、
②4°硬性装具、中間位軟性装具ともに装具なしに比べ有意に疼痛が寛解し、内反モーメントも有意に低下した。内反モーメントの減少度は4°硬性装具で平均25%減少した。中間位軟性装具で12.5%減少した。
この結果から4°硬性装具はより内反モーメントの減少により免荷作用に優れており、膝の骨破壊進行を予防する可能性が高い。因みに8°硬性装具は4°硬性装具より免荷作用が優れているが痛みのため長時間装着することができなかった。

2 件のコメント:

tomita さんのコメント...

面白い内容ですね。最初の運動の継続率は各群の平均年齢が気になります。
確かに、OAは早期に運動を指導すると経過が良い印象があります。
初診で来た時にすでにかなり変形が進行している人は、経過も悪いし、運動も定着しない傾向が多いので、納得の結果でした。
いつもありがとうございます。

亀仙人 さんのコメント...

ありがとうございます。
平均年齢は記載されておりませんでした。
引用文献を載せます。
黒澤尚:変形性膝関節症に対するホームエクササイズによる保存療法.日整会誌.79:793-805,2005.
黒澤尚:変形性膝関節症に対する保存療法-ホームエクササイズの継続率-.日整会誌.80:933-941,2006.