2011年7月2日土曜日

日本人の座り方


もと校長先生の患者さんに勧められ、「日本人の坐り方 矢田部英正著」を読んでみました。

一言で言えば正座が正式な坐り方になったのはわりと最近のようで、それまで日本人は多様な座り方をしてきたようです。絵画や文献などを調べてみると江戸の中頃では正座で座る人がちらほらでてくるが、それ以前の平安、鎌倉、室町時代では正座の絵は非常に少ない。まったくしていないというわけではなく、座り方には自由度があり貴族や武士、庶民にいたるまでいろいろな座り方をしていたとのことです。

茶の湯というと現在はもちろん正座ですが、4代徳川将軍の頃の茶の湯をみると立て膝(左足を立て、右膝は正座と同じ座り方)で茶を点てていたそうです。つまり茶の湯の際の正式な座り方はその当時は立て膝だったようです。長谷川等伯の肖像画で見ると千利休はあぐらをかいています。あぐらをかくと言うことは体を大きくみせようとする効果があったそうです。

将軍に拝謁する際は室町時代はあぐらが主流だったそうですが、徳川幕府2代将軍秀忠の時に正座で拝謁するように決められたそうです。
江戸時代後期の籠からえらい人が出てくる時の写真があります。いわゆる「頭が高い控えおろう」の図であると思われるが、周りの侍は決して正座していない。どういう座り方かというとヤンキー座りで、頭だけ低くするという座り方のようです。当時はこれでも失礼で無かったようです。これからすると大名行列などでも沿道の人たちは行列を正座ではなく、ヤンキー座りでやり過ごしたのではないかと思います。

僧侶においても中世の絵をみると立て膝をついて反対の足はあぐらのようになっているものが多く、正座をしている絵は少ないそうです。
女性ではどうかというと、平安貴族等の絵では着物に隠れてどのように座っているかは判別が困難とのことです。法然上人説法図でみると女性でも正座の人もいるが、立て膝(体操座り)でお祈りしている図があり、そのような場でも特に立て膝でも失礼でなかったことがわかります。

日本人は古来は多様な座り方が許容されていたようですが、幕末頃になると正座でくつろぐ姿が増えてきます。完全に正座が正しい座り方になるのは、明治期の礼法教育(小笠原流)の影響が大きいようです。
言葉においても夏目漱石の小説には正座という言葉は出てこなくて、「かしこまる」「端座」などが正座を表す言葉になっています。その弟子の寺田寅彦のエッセーには正座と出てきており、大体明治期に「正しい座り方」すなわち正座と呼ばれるようになったそうです。

3 件のコメント:

okadaman さんのコメント...

正座は日本の伝統的な座法と思っていました。伝統的といって思い込んでいたようです。時代劇の影響も大きいのでしょうね。
この写真、以前に見せて頂いた写真、「昔の飛脚の足」に次ぐ衝撃度でした。

tomita さんのコメント...

ヤンキー座りが無礼でないあたりで、かなり笑いました。
最近のブログの更新楽しみにしています。頑張って下さい。

亀仙人 さんのコメント...

ありがとうございます。
梅田整骨院院長ブログに触発され、頭を悩ませながらやっております。
反応があるとやる気が出ますね。